
NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026
2回目の開催となった「NOT A HOTEL DESIGN COMPETITION 2026」。40歳未満の建築家・クリエイターを対象に、建築士の資格の有無を問わないという、若手に門戸を大きく開いているコンペティションだ。数々の有名クリエイターとコラボレーションし、日本の各地に新たな体験を創出してきたNOT A HOTELが追求する建築とは。さまざまなクリエイターと協業しプロジェクトを推進する、NOT A HOTEL社内の建築部門「NOT A HOTEL ARCHITECTS」メンバーの言葉からそのエッセンスを探る。

NOT A HOTELにとって、建築の建つ敷地は非常に重要だ。2025年にリリースされた「RUSUTSU」をはじめとして、自然溢れる敷地にスタイリッシュな現代建築が建つ、劇的な姿を見たことがある人は多いだろう。NOT A HOTEL ARCHITECTS プロジェクトマネージャーの櫨広樹氏によれば、NOT A HOTELが敷地の選定において特に意識しているのは土地の「隠れたポテンシャルを見つける」ことだという。 「NOT A HOTELのミッションは『日本の価値を上げる』こと。重要なのは、植生や地形などの自然への敬意を払いつつ、眺望やロケーションなど、その土地だけが持つ隠れたポテンシャルを建築家・クリエイターと共に発掘し、顕在化することなんです。」(櫨) 日本全国に眠る、まだ広く知られていないポテンシャルにあふれた土地を発見することができれば、建築を通してその魅力を多くの方に伝えることができる。魅力的な場所をつくることが人を呼び込み、周辺の地域を潤すことができれば、結果的に地域を巻き込んだ循環型の経済圏を形成する取り組みとなる。 今回の敷地となる屋久島も、隠れたポテンシャルを秘めた土地だ。山の中腹にある斜面地で、降水量が多く、豊かな植生に囲まれて四季の変化を感じられる場所といった特徴がある。こうした特徴を捉えながら、屋久島の価値をともに高めるような提案が求められる。

選び抜いた土地に建つ建築を、どう表現して伝えるか。その役割を担うのがフォトリアルな CGパースだ。今日、多くの建築家にとって、CGパースは設計プロセスにおいて日常的なものとなっており、検討用のラフからプレゼンテーションまで、目的は様々だろう。NOT A HOTELもまたCGパースを重要視しており、どれも写真と見間違うほどのクオリティを誇る。しかし、これらは単なる「プレゼン素材のひとつ」とは異なる。 最も重要なのは、完成前から建築の世界観を伝え、見る者をワクワクさせること。建物の完成前から販売を開始し、購入者を募るビジネスモデル上、実際の空間や体験、魅力を伝えるために、CGパースがコミュニケーションツールとして非常に重要な役割を果たす。 CGパースクリエイターの牧野ひかり氏によれば、CGパースは「情報をディレクション」し、「体験を表現する」もの。ただ美しい描写を重視するだけでなく、「その場所で何を感じて欲しいか」を見せる必要がある。例えば、群馬県利根郡みなかみ町に建つ「MINAKAMI TOJI」では、美しい月が見える景観からインスピレーションを受け、満月をモチーフにした照明が印象的に見えるパースを作成した。北海道のスキー場山頂に建つ「RUSUTSU」のCGは一見しただけで、羊蹄山ビューを独占できる眺望やスムーズなスキーアウトが叶うことを予感させる。建築そのものはもちろん、土地の魅力、そこで起こる感情を表現するものなのだ。 このようにCGパースは非常に重要な表現だが、今回のコンペで競うのはCGパースの出来栄えではなく、ここでしか味わえない体験から落とし込まれた建築のデザイン。空間構成や素材の選択、場所との関係性といった建築の特徴を適切に示すことが重要となる。 参考記事 note: https://note.com/notahotel_inc/n/n832565b7bdfe

NOT A HOTELがつくる空間は、数々のクリエイターと協働しているにも関わらず、すべてにおいて「別荘でも、ホテルでもない空間」が体現されている。それを支える要素のひとつが、眼に見える部分のデザインだ。仕上げ材や調度品など一つひとつが、こだわり抜いて選定されている。例えば、仕上げ材は自然素材をベースにして、フェイク材はほぼ使わない。ミニバーの冷蔵庫など、既製品ではなくオリジナルプロダクトを開発しているものもある。 これらの宿泊体験に直結するものの品質をディレクションするのがNOT A HOTEL ARCHITECTS のブランドディレクターだ。リーダーを務める遊佐淳平氏によると、ブランドディレクターの役割とは「オーナーの日常をつくる」こと。 非日常の驚きを提供する一方、非日常の裏面である日常をつくることも同じくらい大切にする。それは「オーナーにとっての安心感」にもつながるという。 CGパースや実際に完成した建築を見れば、デザインへのこだわりがよくわかる。一方で、見た目だけではなく宿泊施設としての耐久性やメンテナンス性などの機能面も同時に追求している。デザイン性と機能性を妥協せずに両立させるところに、NOT A HOTELのエッセンスが多分に含まれている。そうした積み重ねの結果が、一見すると斬新なデザインでも、「日常の安心感」が保たれた空間としてあらわれているのだろう。 参考記事 note: https://note.com/notahotel_inc/n/n00e7ea421345

魅力的なCGパースをつくっても、ホテルという事業性が高い機能では、建設費のコストカットなどで理想の空間をつくり上げられないことはままある。しかし、すでに完成している「AOSHIMA」や「NASU」を見ると、NOT A HOTELでは購入者募集のCGとほぼ変わらない建築が実現していることがわかる。 NOT A HOTELは施工監理においてもクリエイティビティを大切にしており、基本的にコストダウンのためだけのVEは避け、むしろ価値があるアイデアだと思ったらさらに予算をかけることも厭わないという。建設現場に持ち込まれ、最低限目指すべきゴールとして掲げられるCGパースは、施工プロセスにおける羅針盤とも言える。 運営開始後も品質向上に余念がない。運営を担うLCM(ライフサイクルマネジメント)では、完成した建物を50、100年スパンで維持管理することを主な業務としている。建物内で発生したトラブルについては、もとの状態に戻すだけでなく、より良い状態にグレードアップし、その後再発しないように検討します。さらに、これから建設するNOT A HOTELの建物で同様の事象が発生しないように、一度発生した不具合や課題はNOT A HOTELのデザインコード(仕上げ材の基準、納まりのルール、検証の手順など)に組み込まれ、再発の防止に務めるとともにNOT A HOTELの設計基準にもなっている。 「メンテナンス性や安全面では、基本設計、実施設計のフェーズで社内メンバーが全面的にバックアップします。応募者の方々には、超ワクワク/超Wowを生み出すことだけに注力して頂き、素晴らしい提案と出会えることを楽しみにしています」( NOT A HOTEL ARCHITECTS ライフサイクルマネジメント 竹口) 施工・運営管理だけでなく、NOT A HOTELには経験豊富なプロジェクトマネージャーや建築デザイナーが在籍しているため、案に応じて必要なサポートができる体制が整っている。そのため、応募者は「目指すべき魅力的なデザイン」に注力することができるのだ。

ビャルケ・インゲルスや藤本壮介、NIGO®、片山正通、相澤陽介など多数の建築家・クリエイターと協働して個性ある建築を生み出すNOT A HOTEL。外部の多様な視点や創造力を取り入れる体制が、ブランドの新鮮さと革新性につながっている。一方で、多くの選択肢があるなかでなぜコンペティションを開催するのかというと、新しい才能と出会うためだ。 「日本のクリエイティビティを高めていくためには、次世代を担う人たちにチャンスがあることが大事だと思います。すでに優れた建築を数多く生み出している方たちと協働しつつ、培われたノウハウを活かして無限の可能性を持つ隠れた建築家・クリエイターのポテンシャルも引き出したい。『日本の価値を上げる』建築の実現に向けて、若手の建築家・クリエイターのみなさんと一緒にチャレンジする良きパートナーに、NOT A HOTELがなれたらいいなと思います」(櫨) 今回のコンペは建築家ではなくても参加できるようになっている。デザイナーのような建築業界以外のクリエイターと協働して、建築家の発想を超えたクリエイションを期待しているためだ。NOT A HOTELには経験豊富なプロジェクトマネージャーや建築デザイナーが在籍しており、提案に応じて柔軟に必要なサポートができる体制が整っている。そのため、応募者は「目指すべき魅力的なデザイン」に注力することができるのだ。 NOT A HOTELが目指すのは、建築家・クリエイターが「本当に良い」と信じたものを実現できる環境。あなたの発想が、日本の未来の風景をつくるかもしれない。NOT A HOTELの理念に共感する人は、本コンペティションを通じて「日本の価値を上げる」一翼を担ってみてはいかがだろうか。
EDIT・TEXT
PHOTO
Akihiro Okamoto
Maya Matsuura, NewColor inc, Kenta Hasegawa, Kozo Takayama